2003.07.07 Monday

草千里--阿蘇

こんな情景覚えてますか?
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いろいろ思い出があると思います。コメントお待ちしています。松代

2003.07.07 Monday

原田君レクチャー目次

山形県高校生文化フェスティバル「発見!山形のすごい人」:基調講演 
「地球史が教える若者の生き方」   京都造形芸術大学芸術学部 教授 原田憲一 
2002年11月23日・山形テルサ

1.なぜ人間は死ぬと分かっていても生きていくのか
2.地球の歴史を長さで表すと
3.地球と生命の歴史
4.地球と生命の歴史から学ぶこと
5.生命史的人生訓
6.山に登れば高い山が見える
7.高校で習うことは何か
8.美しくなってきた地球
9.人間の生命史的な役割
10.山形県の発展方向と君たちの進路
本稿は、山形県が起こしたテープ原稿を、筆者が編集し加筆修正したものです。県が作成した報告書に収録された講演記録とは若干異なっています。
(c)Harada, Kenichi 2002-

2003.07.07 Monday

山形県の発展方向と君たちの進路

「地球史が教える若者の生き方」 原田憲一 (c)Harada, Kenichi 2002-
10.山形県の発展方向と君たちの進路

山形県では10年ごとに総合発展計画を策定しています。これから山形県をどういう県にしていけばよいかを、各界の専門家が集まって検討して、いくつかの案を出す。そして最終的に、知事が「よし、これでいこう」と決めて実行していくわけです。平成7年には伊藤善市先生という帝京大学教授が中心となって、計画案がまとめあげられました。(註13)それを5年後(平成12年)に見直すこととなり、今度は芳賀徹先生という京都造形芸術大学の学長が中心となって、上記計画に基づいて、特に3つの方向で山形県を伸ばしていこうという答申を高橋和雄知事に出しました。(註14)

その一つは、まさしく「美しい山形へ」。山形県民は人間の本流をまっすぐに歩いて行こうではないか、という提案です。それから「豊かな山形へ」。この美しさを求めるには、どんなに貧乏でも夢を見失わずに頑張る人もいますが、やはりある程度の豊かさが必要なので、県民の暮らしを豊かにしようということです。しかし、これらは山形県民だけが達成すればよい目標ではない。日本人でも外国人でも山形県を訪れてみたい人は誰でも暖かく受け入れて、我われの生き方に共鳴してもらう。そういう「開かれた山形」にしよう、と提言したわけです。
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2003.07.07 Monday

人間の生命史的な役割

「地球史が教える若者の生き方」 原田憲一 (c)Harada, Kenichi 2002-
9.人間の生命史的な役割

地球の歴史は美しくなってきた歴史ですが、最も美しくなった段階で現れた生き物が、アウストラロピテクスを始祖とする人間の仲間です。その末裔である我われホモ・サピエンスの先行者は、旧石器を使っていたネアンデルタール人で、かなり高度な意識をもっていました。その裏づけは、ネアンデルタール人の女の子が葬られた墓のなかの土からヤグルマソウの花粉がいっぱい出てきたことです。女の子が死んだ時に、おそらくお父さんお母さん、親戚縁者が彼女の死を悼んでヤグルマソウの花束を捧げたのでしょう。ネアンデルタール人も死を悲しむ心、花を美しいと感じる心を持っていたことは間違いないのですが、芸術作品と呼べるものは残していません。

その理由を最近、仲間の地球科学者から教えてもらいました。(註12)
今の人間は言語能力が非常に発達しています。ウグイスを騙すくらい鳴き真似がうまかったり、楽器がわりに口で音を出すこともできる。だから、無数の言葉を語りわけることができます。しかしネアンデルタール人の骨を調べると、我われほど巧みにはしゃべれなかったようです。つまり、幼子が「あー」とか「うー」とか「これー」としか言えないように、しゃべれる言葉の数が少なかった。だから、目の前にある花はきれいだとか、この死んだ子供はかわいそうだということは言えても、目の前にない出来事や事象を言葉で説明することはできなかったようです。
ところが我われは、さまざまな言葉を組み合わせることで、目に見えない出来事を語ることができます。たとえば、山を越えて向こう側に3日間歩いて行くと、大きな水溜まりがあって、そこには魚がたくさんいたとか、3年前に大雪が降ったので、北の方から逃げてきた、とかです。
だから、「真・善・美」のように、言葉でしか表現できない抽象的な概念が生み出された。そうすると、花を見ても美しい。鳥を見ても美しい。四季折々の自然を見ても美しい、という個別的な美しさを一度抽象化して、頭の中で美の概念を組み立て、それを今度は歌とか踊りとか、彫刻とか絵画といったかたちで表現する。すなわち芸術を、我われ人間が初めて創り出したわけです。
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2003.07.07 Monday

美しくなってきた地球

「地球史が教える若者の生き方」 原田憲一 (c)Harada, Kenichi 2002-
8.美しくなってきた地球

先ほど言いましたように、君たちは、死ぬと分かっていても、寿命がくるまで生き生きと、生きぬかないといけない。親から受け継いだ生命の流れを次世代に受け渡すためです。そして、生き生きと生きていくには、60億人の中で自分一人にしかできないことをやることです。それはとても素晴らしい生き方なので、生きている間は言うまでも無く死んだ後でさえも、必ず他人を感動させ、勇気づけます。
とはいえ、「好きなこと、得意なことをやれば良い」と言われても、「人間はやはり何かすべきことがあるのではないか」と考える人も多いはずです。残り時間が少ないので、詳しく説明できませんが、配布した資料「美しくなる地球と芸術立国」(註11)と「人間にとって芸術とは何か」(註12)を参照しながら聞いてください。

地球46億年の歴史の最末端に我われがいて、環境を破壊している。アマゾンの熱帯雨林を乱伐しているとか、オゾン層を破壊している。最上川にゴミを投げ込んだり家庭雑排水を垂れ流して、日本海を汚すとかです。もし、君たちが庄内浜に立ってゴミだらけの浜辺を見れば、ついついタイムマシーンで過去に遡っていけば、いまのような汚れの無いもっと美しい自然が見えるに違いないと思いがちです。
ところが500万年前に戻っても、地球は今ほど美しくない。なぜかというと、その頃はまだ四季折々がはっきりしていないので、ロッキー山脈の氷河地形とか鳥海山の紅葉は見ることができない。しかも、目にする生き物の種類も今より少なかった。つまり「自然の美」が少なかったわけです。
現在は、特に日本では、四季の変化がはっきりしています。新緑があったり、紅葉があったり、渡り鳥が渡ってきたり、真っ白な雪で覆われたり、と。しかし、こういう変化に富んだ四季の移り変わりが完成したのは、地質学的にはごく最近、わずか数十万年以降のことです。それではと、3万年前の山形に戻ってみても、出羽三山神社とか山形の唐松観音はない。専称寺もなければ山形城もない。馬見ヶ崎川の川沿いにある桜並木も一切ない。ということは、今の地球が一番美しい。
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2003.07.07 Monday

高校で習うことは何か

「地球史が教える若者の生き方」 原田憲一 (c)Harada, Kenichi 2002-
7.高校で習うことは何か

京都造形芸術大学で学生に「将来もしも世界有数のファッションデザイナーになったとしたら、どこで活躍していると思いますか」と尋ねると、「ミラノ」とか「パリ」と答えるわけです。では「イタリア語かフランス語をしゃべれるか」と聞くと「しゃべれません」。「英語は?」「大嫌いです」。「じゃあ、ミラノやパリに行ってどうするつもりだ。イタリア語もフランス語も知らない、英語はしゃべれない。それで活躍できると思うか」。「それから、ミラノはどこにある町か知っているか」「イタリアです」。「イタリアのどのへんにある」「そこまでは知りません」と平気で言う。大まかな世界地図くらい頭に入っていなければ困る。また、イタリアがどういう国で、ミラノの歴史はどうで、なぜファッションの町になったのか、ということもファッションデザイナーになるには必要な知識です。

君たちも、ファッションでも果樹栽培でも何でもいいのですが、自分が将来世界の第一人者となった時に、どこでどんな活躍をしているのかを思い浮かべて見てください。世界の地理も要るし、世界史もいることが分かるはずです。世界の一流と仕事場や社交場で会話するには英語が不可欠だし、東南アジア圏では漢字も必要です。また、自分の生い立ちや考え方を説明しようとすれば、日本の歴史や地理もいるわけです。無論、生地の染色、裁断、縫製ということになれば理科・工作の世界になる。そして、デザイナー契約やバイヤーとの交渉などを考えると、社会科は必須科目です。また、国籍が違う人々が集まる職場での人間関係を上手にまとめるには、ホームルームの時間や部活でチームワークを学んでおかねばなりません。しかし、何と言っても世界的に活躍するには健康第一だから、保健の授業は欠かせないし、体育実技もサボれない。

高校時代に学ぶことは、決して大学受験目当てのものではない。将来世界一になった時に困らないだけの基礎を与えてくれるものなのです。だから高校時代の勉強は、科目を問わず、非常に重要です。
私も、この年になって東洋哲学の勉強会に呼ばれることもあるわけです。その時に、高校でたった1年しか漢文を勉強しなかったのに、漢文の資料は何とか読めました。フランス語の資料だと全く分からないのが、漢文だと3割くらい分かります。「ああ、習っておいてよかった」と思いました。当時は漢文の先生を鬼かと思って恨んでいたのですが、今では、厳しく鍛えられたからこそだ、と感謝しています。

2003.07.07 Monday

山に登れば高い山が見える

「地球史が教える若者の生き方」 原田憲一 (c)Harada, Kenichi 2002-
6.山に登れば高い山が見える

私の娘が高校に入学したとき、登山部に入ろうかどうかと迷っていたので、「とにかく山に登ってみろ」と助言しました。なぜならば、どんなに低い山でも、山頂に立つと、必ず高い山が見えるからです。次にその高い山に登ると、もっと高い山が見えてくる。そうして目標がだんだん高くなっていく。
低い山の山頂には、わけの分からない人が沢山いるものですが、高い山になればなるほど、装備もしっかりしてくるし、技術もしっかりしてくる。もちろん体力もしっかりしてくる。アルプス級、ヒマラヤ級の山になると、本当のトップクラスしかいませんから、そういう登山家を見ているだけで「こうすればいいのか。ああすればいいのだな」と技術向上のヒントを得ることができる。勿論、直に教えてもらうことすべてが勉強になる。そうして、次々に高い山を目指していくと、いつのまにか山頂でも2、3人しか見かけなくなる。そして山を降りて行くと、「あの人は三本柱の一人だ」とか「四天王の一人だ」とか言われる。
要は、娘にそういうことを体得してもらいたかったわけです。
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2003.07.07 Monday

生命史的人生訓

「地球史が教える若者の生き方」 原田憲一 (c)Harada, Kenichi 2002-
5.生命史的人生訓

最近やたらに「日本人には個性がない。もっと個性を育てよう」という言葉がはやっていますが、とんでもない誤解です。個性とはほかでもない、君たち一人ひとりの存在そのものです。母親でなければ父親でもない、先に生まれた姉とも後から生まれてきた弟とも全く違う個性がある。それは受精したとたんから与えられているものです。だからこそ、君たちは、それぞれに違った生き方をする。
釈迦は、生まれてくる時に「天上天下唯我独尊」と唱えたそうです。この広い世の中で我はただ一人。ただ一人だからこそ我は尊いのだ、と。しかし「天上天下唯我独尊」とは、決して釈迦だけのことを指した言葉ではない。全ての命がそうだということを言ったわけです。君たちもそうなのです。過去40億年の生命の歴史の中で、さらにはこれから数億年の未来にも、君は君しかいない。貴女はあなたしかいないということを言ったわけです。
だから、君たちはまず、生まれてきた自分が今生きている、そのことに自信を持ってください。そのために、家に帰ったら、ノートに「天上天下唯我独尊」と大きく書いてください。
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2003.07.07 Monday

地球と生命の歴史から学ぶこと

「地球史が教える若者の生き方」 原田憲一 (c)Harada, Kenichi 2002-
4.地球と生命の歴史から学ぶこと

地球と生き物の歴史を知ると、まず生き物は全て兄弟姉妹であることが分かります。40億年前にDNAの仕組みが完成して、それがそのまま我われに残っているからです。アメーバであろうとキノコであろうと、ミミズであろうと人間であろうと、みんな同じ材料と構造と機能をもったDNAを持っているので、共通の祖先をもった仲間だと言えます。全ての生き物を大切にしなければならないという宗教的な教えには、深い理由があったのです。
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地球と生命の歴史

「地球史が教える若者の生き方」 原田憲一 (c)Harada, Kenichi 2002-
3.地球と生命の歴史

約46億年前、無数の隕石が衝突して地球が誕生しました。(註3)直径が10kmほどの隕石、ちょうど山形盆地にすっぽり入るくらいの隕石が、3000万年ほどの間に何千万個何億個と衝突してできた。なぜそんなことが分かるのか、と私も不思議に思うのですが、最新の地球科学的研究の結果ようやく分かってきました。
 誕生直後の地球は灼熱の火の玉、つまりマグマ〔岩石が溶けたもの〕の塊でした。そのマグマから水蒸気と二酸化炭素が大量に蒸発して、原始大気ができました。大気中の水蒸気は大気上空で冷やされて水滴となり、雨となって地表に向かって降ってきたのですが、地表が高温だったために、空中で蒸発して水蒸気にもどりました。

42億年前になると隕石の衝突もほとんど無くなり、地表が冷えてきたために、大気中の水蒸気が雨となって地表に降ってきました。地表はまだ熱くて、最初に降った雨はすぐ蒸発したはずですが、その時に気化熱を奪ったので地表は急速に冷やされて、加速度的に雨が降りやすくなりました。史上初の集中豪雨がどの位降り続いたかはまだよく分かりませんが、雨水は地表全体を覆って海を作りました。地球ができる時間に比べれば、海の形成はほんの一瞬の出来事でした。
とはいえ42億年前のことなので、海は非常に長い歴史を持っています。現在の海水はおよそ3000年に1回の割合でかき混ぜられています。海の誕生以来、平均して1万年に1回の割合でかき混ぜられてきたとしても、42万回かき混ぜられたことになります。だから、天然の海水の組成は驚くほど均一です。しかし、人間の時間スケールからすれば、海水の攪拌はほどんど行われていないことになるので、過去百年ほどの間に沿岸域に放出された鉛や水銀などの重金属、農薬や家庭洗剤などの化合物そして死の灰などは、ほとんど拡散せず、局地的に濃集して、生態系が破壊されるわけです。
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