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2003.07.07 Monday

高校で習うことは何か

「地球史が教える若者の生き方」 原田憲一 (c)Harada, Kenichi 2002-
7.高校で習うことは何か

京都造形芸術大学で学生に「将来もしも世界有数のファッションデザイナーになったとしたら、どこで活躍していると思いますか」と尋ねると、「ミラノ」とか「パリ」と答えるわけです。では「イタリア語かフランス語をしゃべれるか」と聞くと「しゃべれません」。「英語は?」「大嫌いです」。「じゃあ、ミラノやパリに行ってどうするつもりだ。イタリア語もフランス語も知らない、英語はしゃべれない。それで活躍できると思うか」。「それから、ミラノはどこにある町か知っているか」「イタリアです」。「イタリアのどのへんにある」「そこまでは知りません」と平気で言う。大まかな世界地図くらい頭に入っていなければ困る。また、イタリアがどういう国で、ミラノの歴史はどうで、なぜファッションの町になったのか、ということもファッションデザイナーになるには必要な知識です。

君たちも、ファッションでも果樹栽培でも何でもいいのですが、自分が将来世界の第一人者となった時に、どこでどんな活躍をしているのかを思い浮かべて見てください。世界の地理も要るし、世界史もいることが分かるはずです。世界の一流と仕事場や社交場で会話するには英語が不可欠だし、東南アジア圏では漢字も必要です。また、自分の生い立ちや考え方を説明しようとすれば、日本の歴史や地理もいるわけです。無論、生地の染色、裁断、縫製ということになれば理科・工作の世界になる。そして、デザイナー契約やバイヤーとの交渉などを考えると、社会科は必須科目です。また、国籍が違う人々が集まる職場での人間関係を上手にまとめるには、ホームルームの時間や部活でチームワークを学んでおかねばなりません。しかし、何と言っても世界的に活躍するには健康第一だから、保健の授業は欠かせないし、体育実技もサボれない。

高校時代に学ぶことは、決して大学受験目当てのものではない。将来世界一になった時に困らないだけの基礎を与えてくれるものなのです。だから高校時代の勉強は、科目を問わず、非常に重要です。
私も、この年になって東洋哲学の勉強会に呼ばれることもあるわけです。その時に、高校でたった1年しか漢文を勉強しなかったのに、漢文の資料は何とか読めました。フランス語の資料だと全く分からないのが、漢文だと3割くらい分かります。「ああ、習っておいてよかった」と思いました。当時は漢文の先生を鬼かと思って恨んでいたのですが、今では、厳しく鍛えられたからこそだ、と感謝しています。

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