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2003.07.07 Monday

地球と生命の歴史

「地球史が教える若者の生き方」 原田憲一 (c)Harada, Kenichi 2002-
3.地球と生命の歴史

約46億年前、無数の隕石が衝突して地球が誕生しました。(註3)直径が10kmほどの隕石、ちょうど山形盆地にすっぽり入るくらいの隕石が、3000万年ほどの間に何千万個何億個と衝突してできた。なぜそんなことが分かるのか、と私も不思議に思うのですが、最新の地球科学的研究の結果ようやく分かってきました。
 誕生直後の地球は灼熱の火の玉、つまりマグマ〔岩石が溶けたもの〕の塊でした。そのマグマから水蒸気と二酸化炭素が大量に蒸発して、原始大気ができました。大気中の水蒸気は大気上空で冷やされて水滴となり、雨となって地表に向かって降ってきたのですが、地表が高温だったために、空中で蒸発して水蒸気にもどりました。

42億年前になると隕石の衝突もほとんど無くなり、地表が冷えてきたために、大気中の水蒸気が雨となって地表に降ってきました。地表はまだ熱くて、最初に降った雨はすぐ蒸発したはずですが、その時に気化熱を奪ったので地表は急速に冷やされて、加速度的に雨が降りやすくなりました。史上初の集中豪雨がどの位降り続いたかはまだよく分かりませんが、雨水は地表全体を覆って海を作りました。地球ができる時間に比べれば、海の形成はほんの一瞬の出来事でした。
とはいえ42億年前のことなので、海は非常に長い歴史を持っています。現在の海水はおよそ3000年に1回の割合でかき混ぜられています。海の誕生以来、平均して1万年に1回の割合でかき混ぜられてきたとしても、42万回かき混ぜられたことになります。だから、天然の海水の組成は驚くほど均一です。しかし、人間の時間スケールからすれば、海水の攪拌はほどんど行われていないことになるので、過去百年ほどの間に沿岸域に放出された鉛や水銀などの重金属、農薬や家庭洗剤などの化合物そして死の灰などは、ほとんど拡散せず、局地的に濃集して、生態系が破壊されるわけです。
 地球ができてから5億年、わずか50mほどテープを巻いたところで、生き物が海のなかで誕生しました。(註4)どういう形で生き物が生まれ出てきたかは大きな謎です。いま生き物は少なくとも3000万種、多ければ8000万種以上いるだろうと推定されていますが、すべての祖先は一種類だと言われています。これは遺伝子を調べると分かります。下等生物と呼ばれている単細胞のバクテリアから、高等生物と呼ばれている人間まで、生き物は全て遺伝子を持っていて、その実体はDNA(核酸)という物質です。
DNAの材料は4種類のアミノ酸で、二重らせん構造をもっている。そして受精の時、二重らせんが二つに分かれて、もう1本の異性のらせんと結合して二重らせん構造にもどることで、遺伝情報を伝達していきます。あらゆる生き物が共通してDNAをもっていて、その材料と形態と機能が全て同じなので、現在のDNAの構造を最初に持った生き物が共通の祖先だと言えるわけです。

35億年前つまりテープを100m巻いた後に、酸素発生型の光合成を行う単細胞生物らん藻(シアノバクテリア)が出現し、それまで無酸素状態であった海水中に初めて遊離酸素を放出しました。普段何気なく呼吸している酸素には35億年もの歴史があるのです。
今の多くの生き物は酸素が無かったらすぐに死んでしまいますが、それ以前の生き物にとって酸素は猛毒でした。今でもメタンや硫化水素を利用している生き物は当時の名残です。しかし、幸いなことに海水中に放出された酸素は、海水に溶け込んでいた鉄分と反応して酸化鉄(鉄錆)をつくり、海底に沈殿しました。その沈殿は20億年近く続き、海底に酸化鉄の層が分厚く堆積しました。それが、現在鉄資源として利用されているオーストラリアやインドの縞状鉄鉱床です。
こうして海水中の酸素濃度は徐々に高くなってきたので、その間に酸素利用型の生き物が進化しえたわけです。

20億年前に真核生物がでてきました。細胞膜に包まれた原形質の中に核膜に包まれた核があって、その中に遺伝子を乗せた染色体が組み込まれている。そういう真核細胞からなる真核生物が現在の主流を占めていますが、当時はまだ単細胞生物で、細胞分裂で増えていました。私がもし単細胞生物だとしたら、細胞分裂で全く私と瓜ふたつな個体ができるわけです。喩えて言えば、同一規格の乾電池や蛍光灯が何万本も大量生産されるようなものです。どの製品をあてずっぽうに選び出しても、全く性能が変わらないように、同じ遺伝子をもつ個体がいくら増えても、誰が親で誰が子どもなのか区別がつかない。どれが死んでも、親が消えたのか子どもが消えたのか、誰が死んだか分からないわけです。

14億年前に多細胞生物が出現して、オスとメスという性が分離し、有性生殖が始まりました。(註5)オスとメスから作り出された生殖細胞、つまり卵子と精子が合体して子どもが生まれる。メスは当然母親になってオスは父親になり、必ず母親とも父親とも違った子どもができる。受精時に両者の遺伝子が半分ずつまじり合うからです。そして、2番目に生まれてくる子どもは、最初に生まれた子どもとは違う遺伝子を持っているので、兄弟、姉妹が識別できる。だから、どれが死んでも、父親が死んだとか長女が死んでしまった、と特定できるわけです。
それまでは親もなければ子もないので、適応していた環境が失われると、その生き物の種類全体つまり「種」が全滅する危険性があったわけです。しかし、両親とは違う性質を持った子どもは、親が経験したことのないような事態が起こっても、危機を乗り越える可能性が高い。つまり種全体として逆境に耐えられる力が増えたということです。例えば、寒さに強いお父さんと飢えに強いお母さんからは、飢えにも寒さにも強い子どもが出てくる可能性がある。次の子どもは、逆に暖かい気候にも耐えられる性質を持って出てくる。すると、環境が激変して親兄弟が死滅したとしても、何人かの子どもはなんとか生き残っていけるわけです。

しかしながら、有性生殖の仕組みができると、生殖能力を失った個体つまり子どもを産み終えた親は、基本的に子供よりも先に死ぬことになりました。生き物は、個体の「死」という問題を抱え込んでしまったのです。(註6)
釈迦は、人は生まれて年老いて、病気になって死んでいく、「生老病死」の苦しみがあるとおっしゃた。つまり我われがいま悩んでいる「死ぬとわかっていて、なぜ生きていかなければならないのか」という問題です。しかし、古生物学的に見れば、その起源は14億年前にある。だからこそ、すごく深くて難しい問題なのです。

 テープの巻き始めから390m、手前から60mのところ、だいぶ現在に近くなってきた6億年前になって、ようやくクラゲやイソギンチャクのような大型生物が30種類ほどが海の中に現れてきました。そうした生き物全体をエディアカラ動物群といいます。それから7000万年後の4億3000万年前(古生代カンブリア紀中期)になると、三葉虫やアノマロカリスやピカイヤなど1万3000種類と急増します。それ以降は、動植物ともに、加速度的に種類が増えていきましたが、陸上にはまだ生き物の姿はなかった。
 陸上植物は、4億2000年前(シルル紀末期)つまり42m前に初めて出てきました。そして、その1000万年後(デボン紀初期)に昆虫が出てきました。昆虫の祖先が何であったのか、どうやって陸上に上ってきたのか、何も分かっていませんが、陸上動物の中では一番由緒正しい存在です。最近はゴキブリなどの虫をみると、「キャー」と叫んで叩き潰す人が多いようですが、とんでもない罰当たりな行為です。陸上動物の中では一番古くて由緒正しい昆虫からみれば、人間はまったくの新参者です。
 それから2000万年後(デボン紀中期)、今のカエルとかサンショウウオなどの祖先となる両生類が上陸してきました。さらに、3億5000万年前の石炭紀になると、トカゲやイグアナなどの祖先となる爬虫類が出現し、その後中生代になって恐竜が進化していきました。
 しかし、2億4800万年前の古生代ペルム紀〔二畳紀〕末になって、原因はまったく不明ですが、三葉虫やフズリナなどの古生代型の海洋生物が大絶滅し、古生代の幕が閉じました。

 およそ2億3000年前、中生代トリアス紀〔三畳紀〕中期に恐竜が爬虫類から進化してきました。同じ頃、母乳で子どもを育てる哺乳類の祖先が現れたのですが、中生代を通じて、爬虫類と恐竜の陰に隠れてひっそりと暮らしていました。一方、恐竜は大発展し、その後1億6500万年間、陸上をのし歩いていました。映画「ジュラシックパーク」や「ロストワールド」の中には恐竜に関する最新の仮説がいくつか盛り込まれていて、それだけでも面白いのですが、なぜ中生代に限って、あんなに大きくて重い恐竜がうまく歩けたのかとか、翼を広げると今のセスナ機より大きな翼竜が空を飛べたのか、という謎については、詳しいことはまだ分かっていません。(註7)
 そうした恐竜や翼竜などは、アンモナイトなどとともに6500万年前の白亜紀末に絶滅し、中生代の幕が閉じました。地球に隕石がぶつかって、水爆が何千発と爆発したのと同じくらいの大爆発が起こったのが原因だと言われています。しかし最近の研究結果から、原因は色々複合していて、決して隕石の衝突だけではないことが分かってきました。それでも、なぜ滅びたかという究極の原因はまだ解明されていません。(註8)

テープの巻き始めから443m50cmのところで新生代が始まると、それまで恐竜や爬虫類に圧倒されていた哺乳類が大繁栄することになります。そして、今から2500万年前(漸新世後期)つまり端から2m50cmのところで人間の遠い祖先であるサルの仲間が出てきます。その霊長類から二足歩行する人間の直接の祖先が出てきたのは、わずか50cm手前つまり500万年前(鮮新世)です。そして10cmのところ、100万年前(更新世中期)になって、北京原人やジャワ原人のようなもっと人間に近い仲間が出てきて、3cmのところでネアンデルタール人が現れました。そして直系の祖先であるクロマニオン人(ホモ・サピエンス)は1cm前ということになります。

註3『地球について』第12章「地球の起源」を参照してください。
註4『地球について』第13章「生命の進化」を参照してください。
註5 NHKサイエンス スペシャル『生命 40億年はるかな旅』第4巻「奇跡のシステム”性”」を参照してください。
註6 ウィリアム・R・クラーク『ジュラシック・ミステリー 恐竜絶滅と重力の謎』学習研究社
註7 権藤正勝『死はなぜ進化したか』三田出版会、大山ハルミ・山田武『細胞の自殺 アポトーシス』丸善
註8『地球について』第14章「地球環境の変遷」を参照してください。

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