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2004.02.27 Friday

3.なぜ地球は生き物の星なのか--4)海陸の存在意義

4)海陸の存在意義
土をつくっている腐植を含んだ土砂は最終的に海に運ばれる。沿岸の海洋生物は、陸上の動植物と同じく26種類または16種類の生元素を必要としており、海底に堆積した土砂や海水中に浮遊している泥から溶け出した元素を摂取している。決して海水に溶け込んでいる元素だけに頼って生きているわけではないのである。その証拠に海洋全体の植物プランクトンの季節分布を見ると(7、pp.92−93)、陸から土砂が運びこまれる沿岸にしか生息していない。言い換えれば陸地から遠くて土砂が運ばれてこない遠洋は年間を通じて不毛である。

この事実を陸上に当てはめて考えると、土砂を生み出す山々から遠く離れていて、土砂が運び込まれないような地域の生産力は低いと判断できる。しかし、そのような場の代表例であるアマゾンには世界最大の熱帯雨林が広がっている。だが根元にある土は僅か10cmほどの厚さしかなく、森林を伐採するとたちまち洗い流されてしまう。その貧弱な土が樹木を養うためには、必須元素が効率よく循環する必要がある。実際アマゾンでは落ち葉や動物の死骸は速やかに分解されて植物に吸収されているが、新たな土砂の供給がなければ、長期的には必ず元素不足に陥るはずである。

この謎は1980年代後半になってようやく解き明かされた。サハラ砂漠から熱風ハルマッタンによって年間2億トン以上も吹き飛ばされる砂塵の一部がアマゾンまで運ばれ、無機養分を供給している事実が発見されたのである(8)。実際、上で述べた植物プランクトンの季節分布図を見ると、ゴビ砂漠を始めアラビア半島やオーストラリア大陸の砂漠から吹き飛ばされた砂塵がプランクトンを養っている様子が明瞭に読み取れる。人間にとっては「不毛の地」でしかない砂漠も生命圏の維持に本質的な役割を果たしているのである。

地球の表面の1/3が海に覆われていることから地球を「水惑星」とよび、海の存在こそが生命圏を支えていると考える人は多い。確かに最古の生き物は海で誕生したし、いまでも生き物の75%は海洋に生息している。しかし、その多くは陸から海に運び込まれてくる土に生元素の供給を頼っている。すなわち大陸と海洋が並存するからこそ、陸上の岩石風化の産物である土砂が循環し、生命圏が維持されるのである。従って20億年前の大陸の形成とそれ以降の度重なる分裂と衝突が、気候変動や海水準の変動と共に、生き物を進化させる大きな内部要因になったのだと言えよう。

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