●3.なぜ地球は生き物の星なのか--3)土と食物連鎖
3)土と食物連鎖
土の主成分は砂利と泥であるが、それに加えて動植物の遺骸に由来する有機物〔腐植〕が多量に含まれている。だが砂利と泥と腐植を適当に混ぜて水をかければ土になるわけではない。カビや細菌などの微生物とアリやクモなどの昆虫およびミミズやモグラ、ヘビやカエルなどの小動物などが土中に住みつくことが必要である。小動物が巣穴を造ることによってガスと水分が移動するための空間ができ、ミミズやセンチュウなどによって泥が団子状態に固められて団粒構造が発達して保水力が高まり、微生物の働きによって動植物の遺骸が有機物に分解される。そこに水溶性イオン類を含んだ水分が適当に加わることによって、土は初めて植物を育てる機能を発揮するのである。
土から養分を吸って育った植物は草食動物の餌となり、草食動物は肉食動物の餌となる。こうした現象を「弱肉強食」の競争関係と見なす社会ダーウィニズム(社会進化論)的な見方が蔓延しているが、決して肉食動物は強いから草食動物を食べたい放題に襲っているわけではない。実際にアフリカのサバンナで観察すると、ライオンやチーターなどの狩の成功率は10%程度でしかなく、いつも空腹にさいなまれているのが実態である。肉食動物は動物界に君臨するために存在しているのではなく、草食動物を適当に間引いて、彼らが草原を喰い尽くすのを防ぐ歯止めとして存在しているのである。
複雑な喰いつ喰われつの関係〔食物連鎖〕は生き物に必要な食べ物を効率よく循環させる仕組でもある。たとえば映画「ガイア・シンフォニー 第3部」で紹介されていたようにアフリカゾウは大量の木の葉と樹皮を食べるが、一方で未消化の糞を大量に排泄する。糞に含まれた半分解状態の植物繊維などは木に登れない小型草食動物や樹皮をかじることができない昆虫などの餌として利用される。そして、それらが排泄する消化(分解)度がより高い小粒な糞は土中の昆虫や微生物の餌となる。そうした生き物たちは土中の食物連鎖に取り込まれ、最終的な排泄物は腐植やガスの一部となって再び植物に吸収される。
一般に食物連鎖をピラミッド状の階層構造で図示して、その頂点に人間をおいて、人間の生態学的位置を示すことが多い。だが土を媒介とした生元素の循環から見れば、人間は決して生物界に君臨する「万物の霊長」ではない。他の動植物や微生物と同じく食物連鎖の一要素でしかないのである。
現在の地下に発達している複雑な食物連鎖は歴史的な産物であり、陸上植物の出現以前には存在していなかった。おそらく岩石から無機養分を直接吸収する地衣類のような生き物が水辺近くの岩を覆い、その下の割れ目には地衣類から供給される有機物を餌とする微生物がいたはずである。そうした生き物の働きで原始的な土ができたところに陸上植物が出現した。それに続いて昆虫が出現すると、必然的に地下の生態系も複雑化して土の機能は高まり、植物の進化を促した。そして陸上植物の進化を追うように動物も進化して地表の生態系を複雑化し、それとあいまって地下の生態系も複雑化していった。その結果、土の機能はますます高まり、陸上は無論のこと沿岸の生態系も豊かになっていった。少なくともシルル紀以降は、陸と海の生態系は土を媒介にして結びついて進化し、時代と共に多様性をましていったのである。
この歴史的経緯は、生物界は決して弱肉強食の競争社会ではなく、自己も他者もともに繁殖し発展していく共存共栄の社会であることを物語っている。もしも特定な生き物の一人勝ちを許せば、いくら多様な生態系でも時と共に単純化していき、たとえば人工的な杉の単一林が強い風台風で広範になぎ倒されてしまうように、少しの環境変化で大打撃を受けるようになるからである。
土の主成分は砂利と泥であるが、それに加えて動植物の遺骸に由来する有機物〔腐植〕が多量に含まれている。だが砂利と泥と腐植を適当に混ぜて水をかければ土になるわけではない。カビや細菌などの微生物とアリやクモなどの昆虫およびミミズやモグラ、ヘビやカエルなどの小動物などが土中に住みつくことが必要である。小動物が巣穴を造ることによってガスと水分が移動するための空間ができ、ミミズやセンチュウなどによって泥が団子状態に固められて団粒構造が発達して保水力が高まり、微生物の働きによって動植物の遺骸が有機物に分解される。そこに水溶性イオン類を含んだ水分が適当に加わることによって、土は初めて植物を育てる機能を発揮するのである。
土から養分を吸って育った植物は草食動物の餌となり、草食動物は肉食動物の餌となる。こうした現象を「弱肉強食」の競争関係と見なす社会ダーウィニズム(社会進化論)的な見方が蔓延しているが、決して肉食動物は強いから草食動物を食べたい放題に襲っているわけではない。実際にアフリカのサバンナで観察すると、ライオンやチーターなどの狩の成功率は10%程度でしかなく、いつも空腹にさいなまれているのが実態である。肉食動物は動物界に君臨するために存在しているのではなく、草食動物を適当に間引いて、彼らが草原を喰い尽くすのを防ぐ歯止めとして存在しているのである。
複雑な喰いつ喰われつの関係〔食物連鎖〕は生き物に必要な食べ物を効率よく循環させる仕組でもある。たとえば映画「ガイア・シンフォニー 第3部」で紹介されていたようにアフリカゾウは大量の木の葉と樹皮を食べるが、一方で未消化の糞を大量に排泄する。糞に含まれた半分解状態の植物繊維などは木に登れない小型草食動物や樹皮をかじることができない昆虫などの餌として利用される。そして、それらが排泄する消化(分解)度がより高い小粒な糞は土中の昆虫や微生物の餌となる。そうした生き物たちは土中の食物連鎖に取り込まれ、最終的な排泄物は腐植やガスの一部となって再び植物に吸収される。
一般に食物連鎖をピラミッド状の階層構造で図示して、その頂点に人間をおいて、人間の生態学的位置を示すことが多い。だが土を媒介とした生元素の循環から見れば、人間は決して生物界に君臨する「万物の霊長」ではない。他の動植物や微生物と同じく食物連鎖の一要素でしかないのである。
現在の地下に発達している複雑な食物連鎖は歴史的な産物であり、陸上植物の出現以前には存在していなかった。おそらく岩石から無機養分を直接吸収する地衣類のような生き物が水辺近くの岩を覆い、その下の割れ目には地衣類から供給される有機物を餌とする微生物がいたはずである。そうした生き物の働きで原始的な土ができたところに陸上植物が出現した。それに続いて昆虫が出現すると、必然的に地下の生態系も複雑化して土の機能は高まり、植物の進化を促した。そして陸上植物の進化を追うように動物も進化して地表の生態系を複雑化し、それとあいまって地下の生態系も複雑化していった。その結果、土の機能はますます高まり、陸上は無論のこと沿岸の生態系も豊かになっていった。少なくともシルル紀以降は、陸と海の生態系は土を媒介にして結びついて進化し、時代と共に多様性をましていったのである。
この歴史的経緯は、生物界は決して弱肉強食の競争社会ではなく、自己も他者もともに繁殖し発展していく共存共栄の社会であることを物語っている。もしも特定な生き物の一人勝ちを許せば、いくら多様な生態系でも時と共に単純化していき、たとえば人工的な杉の単一林が強い風台風で広範になぎ倒されてしまうように、少しの環境変化で大打撃を受けるようになるからである。
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