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2004.02.27 Friday

3.なぜ地球は生き物の星なのか--6)循環の駆動力

6)循環の駆動力
 地球表面が大気で覆われ、地殻表層部に大陸と海洋が存在することで、天−地−水の循環が生じて環境が浄化され、生命圏では生き物が一貫して進化してきた。しかし、そのなかで大陸は常に浸食作用を受けており、大陸の平均高度(840m)を年間浸食率(4cm)で単純に割ると、陸地はほぼ2100万年で海抜ゼロメートルの平地になってしまう。そうなれば、いくら雨が降ろうと風が吹こうとも土の動きはほとんど無くなり、生き物の進化発展は著しく阻害されるはずである。しかしながら現在のような大陸が形成されたのは20億年以上前のことであり、しかも約4億年前に陸地に植物が出現して以来、陸の生き物は一貫して進化し繁栄の道を歩んできた。この古生物学的事実は過去4億年にわたって一度も陸地から山が消えたことが無かったことを意味している。

 陸地は恒常的に浸食されているが、一方で新しく作りだされているのである。すなわち海洋プレートの沈み込みにともなって大陸の縁辺部に火山列や島弧が形成される。また、およそ2億年周期で生じる大陸の衝突によって巨大山脈が形成される。こうした造陸運動の営力は固体地球の表層部におけるプレート運動とプレートを駆動するマントルの対流(マントルプリューム)にあり、それらを動かす原動力は地球の部部エネルギーである。つまり地球形成時の隕石衝突で発生した熱、鉄とニッケルが地球の中心部に集まって核を形成した時に熱として解放された重力エネルギーおよび岩石に含まれた放射性元素(ウラン、トリウム、カリウム)による発熱である。   

 環境を浄化して生命圏を維持する天−地−水の循環を支える地球内部エネルギーと太陽エネルギーはまだ十分にあるので(11)、従来の循環パターンは少なくとも今後5億年は基本的に維持される。従って人類がいかなる環境破壊で絶滅しようとも、地球環境は速やかに浄化されて、生き物は今までどおりの進化の道を歩んでいく。また、たとえエネルギー資源や鉱物資源の枯渇で絶滅したとしても、地下では各種の資源が着実に蓄積していくのである。

 ちなみに英国の宇宙物理学者ホーキング博士は、1000年後には地球が温暖化しすぎて人間が住めなくなるので、宇宙に移住する研究を開始すべきだと警告した、と数年前に新聞が報道した。また火星を温暖化させて人間が住める星にしようという「テラフォーミング」構想が語られている(12、40p.)。しかし、すでに内部エネルギーを失ってしまった火星つまり「死んだ星」にはもはや生命圏を維持する力は無いと結論できる。さらに地下に各種の資源が胚胎している可能性も低いと判断できる。

 これを逆にいえば、地球のように内部に熱エネルギーをもつ「生きた星」でなければ、いくら大気と水があって太陽エネルギーが適切に利用できたとしても、天−地−水の循環を作りだすことはできず、生命圏を維持することはできない。地球は、固体部分(岩石圏)がダイナミックに躍動しているからこそ、生き物の星になれるのである。

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